HOME > PAHの治療について > どんな治療法があるの?

PAHの治療について

どんな治療法があるの?

20年ほど前までは、肺動脈性肺高血圧症には決定的な治療薬がなく、長い間治療を受けていてもあまり大きな効果は得られませんでした。そのため患者さんは、息苦しさや疲労感などに悩まされながら生活をせざるを得ませんでした。ところが最近になって、いくつかの新しい薬が相次いで開発され、治療効果が上がるようになってきました。特に血管拡張薬を使った治療は、これまで以上に高い効果が得られています。 治療を始めるにあたっては、主治医とよく相談しながら、一人ひとりの患者さんに一番合った薬を選ぶ必要があります。そのためには、それぞれの薬の特徴や、作用・副作用をよく理解することが重要です。 重症度ごとに、適している治療法があります。

肺動脈性肺高血圧症の治療法の選択

2013年に行われた肺高血圧症に関する世界的な会議で検討された治療法の選択順位は以下の通りです。(平成26年時点で国内で承認されていない薬剤を除いています。)

肺動脈性肺高血圧症の治療法の選択

薬物療法

一般的な治療で用いられる薬

抗凝固薬
ワルファリン/抗血小板薬:アスピリンなど肺動脈性肺高血圧症患者さんの中には、肺血管に血液の固まり(血栓)があって血液の流れを悪くしていたり、心臓でできた血栓が肺に流れてきて、肺血管を詰まらせたりする場合があります。
そのため、血栓予防に血液を固まりにくくする抗凝固薬や抗血小板薬を使用します。
利尿薬
フロセミド、スピロノラクトン、トリクロルメチアジドなど尿の量を増やして、体内に必要以上にたまった水分を外に出すことにより、心臓や肺の負担を減らします。ただし、使い過ぎると全身の水分が減ってしまい、かえって症状が悪くなることがあります。
強心薬
ドパミン、ドブタミン、ジゴキシン、ミルリノン、オルプリノンなど心臓の収縮力を増強する薬です。また血管を広げる作用を併せ持つ薬もあります。

血管拡張療法

肺動脈性肺高血圧症治療の中心となる薬です。前項で「最近、いくつかの新しい薬が相次いで開発された」とお話ししましたが、これらはすべて血管拡張薬です。肺動脈性肺高血圧症の患者さんは、肺の細い血管が狭くなっているので、血管拡張薬で血管を広げたり、長期では血管壁の構造が改善して、肺の圧力が下がり、心臓への負担が軽くなります。

 

プロスタグランジンI2
(プロスタサイクリン)
製剤
持続静注:エポプロステノール(注射薬の持続点滴)プロスタサイクリンは、私たちの体の中で作られている物質で、血管を広げる作用(血管拡張作用)を持っています。肺動脈性肺高血圧症の患者さんは体内のプロスタサイクリンが不足しているので、これを補うために、プロスタサイクリンを注射します。ただしこの薬は体内に入ると数分内に分解されて作用を失ってしまうため、点滴やポンプを携帯して、体内に薬を送り続ける必要があります。これはプロスタサイクリン持続静注療法と呼ばれます。またこのような装置を使用するため、日常生活での注意点があります(「プロスタサイクリン持続静注療法を行う場合の注意事項」をご参照ください)。

エポプロステノール(注射薬の持続点滴)

経口薬:ベラプロストエポプロステノール注射は非常に効果的ですが、常にポンプを携帯しなければならず、そのため日常生活でいくつか注意しなければならないことが出てきます。そこで、飲み薬のプロスタサイクリン製剤が開発されましたが、主に軽症の患者さんに使用されます。
エンドセリン
受容体拮抗薬
アンブリセンタン、ボセンタンエンドセリンは体内で作られている、非常に強力で持続的な血管収縮作用を持つ物質です。エンドセリン受容体拮抗薬はエンドセリンのはたらきを抑え、その結果、血管を拡張させる経口薬です。アンブリセンタンと、ボセンタンの2種類があり、軽症・中等症の肺動脈性肺高血圧症で、最も推奨される薬とされています。
ホスホジ
エステラーゼ-5
阻害薬
(PDE-5阻害薬)
シルデナフィル、タダラフィル体内で作られている血管拡張物質の一酸化窒素(NO)のはたらきを増強して、血管を拡張させます。

併用療法

1種類の薬では十分な効果が得られない場合、医師の判断で行われる治療法です。
血管拡張薬としてご紹介した、プロスタサイクリン製剤、エンドセリン受容体拮抗薬およびホスホジエステラーゼ-5阻害薬の3種類の薬は、それぞれ違った仕組みで効果を発揮します。そこで、このうち2~3種類を組み合わせることにより、ひとつの薬剤以上の効果が期待できます。

酸素吸入療法

肺動脈性肺高血圧症では心臓が血液を送り出す力が弱くなっているため、全身へ酸素を運ぶ能力が低下してしまいます(低酸素血症)。特に体を動かした後や睡眠後は大きく低下することがあります。酸素吸入では、通常の空気より高い濃度の酸素を吸うことで、この症状を改善します。

酸素吸入療法

手術療法

●肺移植

薬物療法では十分な効果が得られない場合には、手術療法を行います。
従来は、心臓と肺を同時に移植する心肺移植が行われていましたが、近年、肺移植により心臓の機能が回復することがわかり、肺単独での移植が中心となりました。

ページトップへ